「………」

「友人にそれを打ち明けたら、電話だけでもしてみたら? って言ってくれたんです。その言葉に背中を押されて両親に電話をかけました。両親はわたしを叱ることもなく、元気でよかったと言ってくれたんです。そして、藤沢の家を出たいのなら、お前の心のままにしろ、と」

「………」

「大学ではなく専門学校への進学や、企業で働くことは、全部自分の意思で決めました。辞めたのも自分の決断です。今はこうして藤沢の家に戻りましたが、それもわたしが心のままに決めた道です。……旦那様も奥様も、わたしの両親と同じような思いを、お嬢様にいだいているのではないでしょうか」

「………」

うん、お優しい父様と母様なら、きっとそうおっしゃってくださる。

でもわたしと桂花さんでは決定的に違うことがある。

わたしが決めた道は、恩返しだから。