「はい」

ヤンキーになることは、わたしにとっては母様への近道だったから。

コガサクくんは、はー……と長く息を吐いた。

「……とりあえず、俺を頼られてもなんも出来ないし、藤沢さんにその道は勧めない」

「………そうですか……」

コガサクくんに念を押されて、もう諦めるしかないとわかった。

ふらりと立ち上がる。

突っ立ってから、頭を下げた。

「読書の邪魔しちゃってすみませんでした。失礼致します……」

「あ、う、うん……」

コガサクくんの返事は戸惑っているように聞こえた。

期待していただけにショックが大きい。

……いや、勝手に期待されて失望されるなんてコガサクくんにはとんでもない失礼だってわかってるけど……。

フラフラした足取りで、屋上を出て階段を下りる。

はあ……とため息がもれた。

母様……わたしにヤンキ―の素質はないのでしょうか……。