……ん? なんか物音する……。

水都さんの総真殴り込み事件を無事(?)解決した日の夜遅く。

部屋でベッドに寝転がって本を読んでいたら物音に気付いた。

まさか泥棒? ……なんていうことはない。

父親か母親が一時帰宅したんだろう。

いつもなら無視……するところだけど。

手が、自分の部屋のドアを押し開けていた。

消したはずの廊下とリビングに電気がついている。

リビングのドアを開けると、キッチンの方から小柄な姿が現れた。

「あら。起きてたの」

二か月……ぶりくらいに逢った母親は、開口一番にそう言った。

「本読んでた」

そして俺も俺で、「久しぶり」とか「おかえり」といった言葉はない。

お互いさまか。

「そう。相変わらず本好きなの。お金は足りてる?」

「うん。図書館で借りて、何度も読みたいのだけ買ってる」

親が帰ってこないのが常だったので、図書館で節約料理本を借りてきて簡単な料理は覚えた。

外食は高くつくから。

節約っていいよ。余ったお金で小説買えるから。

……お金を貯めたのち使っていることには変わりないけど。

あ。

「メシ、まだなら冷蔵庫におかずあるよ。炊いた米は冷凍庫」