先生は、家に入ると、私に温かいお茶を淹れてくれた。

「先生、そんなことをして大丈夫なんですか...?
早く休んだ方がいいんじゃ...。」

「ここのところずっと休みっぱなしだったから。
寝てばかりいても身体によくないからね。」

「でも...。」

「はい。
ずっと外で待っていて寒かっただろう?
身体、あったまるよ。」

「あ...ありがとうございます。」

指先からじわじわ温まってくる...。

「おいしい。」

「...良かった。」

先生の笑顔...。

こんなに、尊いものだなんて。

「先生は...私のこと何度も助けてくれましたよね。」

「医者だから。
人を助けることが仕事なんだよ。」

「医者としてもそうかもしれません。
でも、ひとりの人としても、私を救い出してくれたんです。」

「本当にそうかな。
俺は、医療従事者としての義務を果たしたに過ぎない。
君を救うという名目で君を学校や家族とも引き離した。
その選択が、果たして本当に最良だったのかは誰にも分からない。」

「例えそうでも...私は先生に感謝してます。」

「こちらこそ。
本当に君を助けられたのだとしたら、それは君自身が俺に協力してくれたからだよ。」

穏やかな先生の言葉。

でも、本当に助けを必要としているのは。

「今度は私が先生を助けたいんです。」

「俺を...?」

「はい。」