...。

どれほど時間が経っただろうか。

「せんせい...?」

彼は、傘もささずにここまで帰ってきたようだ。

私を見つめて、なお沈黙している。

「おかえりなさい。光さん。」

彼にそう笑いかけてみた。

すると、彼は屈んで私の肩に手を置いた。

真剣で、なぜ私がここにいるのか、咎めようとしている顔だった。

でも。

私が身構える隙もなく、その腕が私を引き寄せた。

濡れた白い衣服から冷たさが伝わってくる。

「...ごめんね。」

先生の優しいこえ。

触れ合っているところから少しずつ私に届いてくる。

お腹から顔に...あつくなってきて...。

わたし...。

彼への気持ちに気付いて、涙が溢れた。

やだ...

本当に辛いのは、先生だったのに...

どうして、私が泣いてるんだろう。

彼を、私、傷つけたのに。

あ...。

「先生...大丈夫ですか...。」

「...。」

震えてる。

やっぱりつらいんだ...。

「先生...。」

「大丈夫。
今日は何も...。」

彼は私に笑ってみせた。

そこには確かに、面影がある。

「寒いから、中入ろう。」

「はい。」