「...苦しいよね。
辛いよね。」

まだ、お腹の辺りが動いてる。

...。

お腹の辺り、

「大きい...?
赤ちゃん、いるの?」

だから、必死に生きて...。

「あ...あぁ...。」

このまま、

このまま...。

この子にとって、全てが終わってしまう。

この子の赤ちゃんも...。


その、現実は、

まだ幼子には、残酷すぎたのかもしれない。

自分には、何もできない。

受け入れなければならない、運命。

そんなもの、

まだ幼い自分には

到底、胸の底にしまっておけるものではなかった。

「...たすけ、なきゃ。」

思わず、その身体に触ってしまった。

ビクン、

と、そのお腹辺りが跳ねる。

「生きてる...まだ、生きてるんだから。」



あとは、無我夢中だった。



「みつる?
猫は?」

「...。」

「ここにいたでしょ。
どこに行ったか見ていない?」

「持ってっちゃった。」

「誰が?」

...。

「ああ...きっと、狸か何かが猫の遺体を持っていってしまったんでしょうね。
ぼく。怪我はなかったかい?」

「...。」

「え、こら、みつる!?
待ちなさい!!」