「沙羅...、あまり調子に乗るんじゃないぞ。」

がん。

床に転がされ、頭を蹴られている。

「病院に被害妄想をぶちまけたらしいな。」

だんだんと強く。

「そんなに父さんと母さんを陥れたいのか、え?」

グラグラするぐらい、
強く、強く。

「父さんはお前を信じていたんだ。
だから入院を許してやったのに。

お前には失望したよ、沙羅。」

ガク。

首の付け根辺りから変な音がした。

「ふ...ぅぅうぅ...。」

痛くて声が出る。

母親もなにも言わず、襖の隙間からその様子を見ている。

「沙羅。
今日は父さんがしつけなおしてやるからな。」

「...。」

「もう、沙羅も十分大人になっただろう。」

「...。」

「お前の価値など、これぐらいしかないんだよ。
もう逆らえないように、心も身体も父さんに曝け出しなさい。」

ぐい。

襟元を掴まれ、揺すられる。

ぐ、ぐぅ...。

息ができない。

首から変な音がする。

「や...め、て...ぇ。」

「お前は母さんに似ているなぁ...。
若い頃にそっくりだよ。」

「ひ...ひっく。」

「顔も、声も...。
匂いも。」

する...っと、その手が解かれた。

「え...。」

「今夜は垣根を越えようか。
母さんのためなら我慢できるだろう?」

あ...。

手が...。

「い....いや...、父さん...。」

「興奮して泣いた顔も美しいな。
このまま私のモノになりなさい。」

「あ...いやぁ...。
い....ひっ....。」

こんな、

こんなひどいこと...。

ひどい。

ひどいひどいひどいひどいひどい...。

「いや...、
いやぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

それから、夜が明けるまで。

その永久にも感じられる、ながいながいあいだ。

浮かんでは消えていったのは、
あの人と過ごした記憶。

私は、どこで間違ったのだろうか。

最初から間違っていたのだろうか。

あの人と出会い、生かされたことは、

こんなもののため...?

先生...。

せんせい。

会いたいよ。

はやく、会いたい。