Your Princess

***

休みの日、当日。
起床して、身支度をして。
食堂へ向かう。
「体調不良っていう設定だから、朝食は少しだけ食べてね」
とサクラさんに言われていたので。
少しだけ食べて残した。
「すんません。おいしくなかったすか?」
厨房から出てきたシュロさんが心配そうに尋ねてくる。
「いいえ。ちょっと、今日は食欲なくて…」
シュロさんから目をそらして答える。
シュロさんのことだから、バレないとは思うが。
真正面から嘘をつくことは出来なかった。
「カレン。部屋で休んだほうがいいわ」
そう言って。サクラさんは部屋へと導いた。
部屋に戻ると。サクラさんはニッコリと笑う。
「少しの間、ベッドに潜り込んで寝たふりしてくれる? 適度に時間を潰してもらったら。食堂裏に待ち合わせしましょう」
「え…また、食堂裏…?」
前回と同じ展開に面食らっていると。
「じゃ、よろしくー」と言って。サクラさんは出て行ってしまった。
仕方ないので、ベッドに潜り込んで布団をかぶっていると。

「何だよ、あいつ具合悪いんじゃないのかよ」
という大声が扉越しに聞こえてきた。
(げっ。蘭いるんだ)
私は布団を頭の上まで被る。
蘭が屋敷にいること自体、久しぶりだ。
「あいつ具合悪いならライト先生呼べよ」
蘭の声は大きいので。
私の部屋にまで、はっきりと聞こえてくる。
「蘭ったら、大丈夫よ。カレンは女の子の日なだけだから」
(ぎゃー)
蘭の話し相手はサクラさんだ。
まさか、女の子の日で対処するとは。
しかもあの男にそんなこと言うなんて…

頬が熱くなる。
恥ずかしすぎる…。
体調不良でいいのに。どうして変なこと言うんだろう。
「女の子の日ってなんだよ」
すぐに蘭は聞き返す。
「あーら。蘭、奥さんもらっておいて。女の子の日を知らないなんて」
絶対に意地悪そうにサクラさんは言っているのだろう。
急に静かになったかと思うと。
「うぉー」という野太い蘭の悲鳴が響いた。
(サクラさんは何て説明したんだろう?)
知りたいようで、知りたくない。
扉のほうを眺める。
「おまえ、そんなこと俺に言うのか!」
「あーら。蘭が無知すぎるのよ。知らないほうがおかしいのよ」
「何だと…」
2人の会話を聴いているうちに。
ヒヤヒヤしたけど。考えてみると。サクラさん、絶対にわざと言っているなと思った。
「そういうことだから、カレンは一日寝ていれば大丈夫よ。それよりも、蘭。今日は大事な日なんでしょう」
「…まあな」