結局。
その日、一日。サクラさんは現れなかった。
代わりにサクラさんに似た男性がいてくれたけど。
流石に男性に身の回りの世話をしてもらうのは嫌だったので。
部屋に入れなかった。
寝る支度を終えて。
ガウンを羽織る。
抜き足忍び足でそっと玄関の扉を開ける。
外はひんやりとして、少し肌寒い。
キャンドルの明かりだけが頼りだ。
キャンドルランタンを持ちながら、ゆっくりとバラ園を突き進む。
歩かなきゃ、頭がおかしくなりそうで。
一日、屋敷にいたら気が狂いそうだった。
ベキッと木の枝を踏んだのか。
音にビックリして心の中で「キャー」と叫んだ。
決して大声は出せない。
バラ園を抜けたところで、犬の鳴き声がしないかと身構えたけど。
流石に夜。
ビビは出てこなかった。
しかし、油断は大敵。
キョロキョロとしながら、暗闇をただひたすら突き進んでいくと。
目の前に白っぽい壁が現れた。
「何コレ」
壁を見上げて、思わず声が出なくなった。
何メートルあるのだろうか。
木々よりも高く、天まで続くかのような高い壁があって。
それは、一部分だけではなく、右にも左にも延々と高い壁が続いている。
まるで敵の侵入を防ぐかのように。
ぐるっと、敷地内を囲っているというのだろうか。
「まるで…」
まるで、牢獄じゃないか…。
もしかして、コレを見せないために…?
「カレンちゃん」
ポンッって。
誰かが私の肩に手をのせた。
私は驚きのあまりに「きゃっ」と言ってランタンを豪快に落とした。
暗闇に立っていたのは女の人…?
「あれ…クリスさん?」
一瞬、女性が立っているのかと思った。
しかしクリスさんが持っているランタンの光ではっきりとクリスさんだということがわかった。
クリスさんはスカーフで顔をグルグルに巻いている。
私より背の高いはずのクリスさんは今、背丈が同じくらいだ。
「こんなところで何してるの?」
声がおかしい。
まるで女の人の声だ。
でも、顔はクリスさんだ。
「えっと・・・散歩です。クリスさんは?」
本当にクリスさんなのかなという違和感を持ちながら。
私はクリスさんの顔を見る。
「オレは秘密。早く部屋に戻ったほうがいいよ。蘭に何言われるかわかんないよ」
クリスさんの顔は無表情だ。
昨日のことなんか、一切気にしてないんだなと思った。
「ごめんなさい。クリスさん。戻ります」
謝ると。さっさと戻ろうと思った。
屋敷へ戻ろうとするとクリスさんが何かしゃべりだした。
「もしさ」
「はい?」
振り返ると。クリスさんはじっとこっちを見つめる。
風がぴゅうと吹いた。
暗闇に立つクリスさんはやはり昼間とは雰囲気が違う。
「もし、ここから逃げ出そうと思うなら。やめたほうが絶対いいよ」
「え?」
クリスさんは、にっこりと笑った。
その日、一日。サクラさんは現れなかった。
代わりにサクラさんに似た男性がいてくれたけど。
流石に男性に身の回りの世話をしてもらうのは嫌だったので。
部屋に入れなかった。
寝る支度を終えて。
ガウンを羽織る。
抜き足忍び足でそっと玄関の扉を開ける。
外はひんやりとして、少し肌寒い。
キャンドルの明かりだけが頼りだ。
キャンドルランタンを持ちながら、ゆっくりとバラ園を突き進む。
歩かなきゃ、頭がおかしくなりそうで。
一日、屋敷にいたら気が狂いそうだった。
ベキッと木の枝を踏んだのか。
音にビックリして心の中で「キャー」と叫んだ。
決して大声は出せない。
バラ園を抜けたところで、犬の鳴き声がしないかと身構えたけど。
流石に夜。
ビビは出てこなかった。
しかし、油断は大敵。
キョロキョロとしながら、暗闇をただひたすら突き進んでいくと。
目の前に白っぽい壁が現れた。
「何コレ」
壁を見上げて、思わず声が出なくなった。
何メートルあるのだろうか。
木々よりも高く、天まで続くかのような高い壁があって。
それは、一部分だけではなく、右にも左にも延々と高い壁が続いている。
まるで敵の侵入を防ぐかのように。
ぐるっと、敷地内を囲っているというのだろうか。
「まるで…」
まるで、牢獄じゃないか…。
もしかして、コレを見せないために…?
「カレンちゃん」
ポンッって。
誰かが私の肩に手をのせた。
私は驚きのあまりに「きゃっ」と言ってランタンを豪快に落とした。
暗闇に立っていたのは女の人…?
「あれ…クリスさん?」
一瞬、女性が立っているのかと思った。
しかしクリスさんが持っているランタンの光ではっきりとクリスさんだということがわかった。
クリスさんはスカーフで顔をグルグルに巻いている。
私より背の高いはずのクリスさんは今、背丈が同じくらいだ。
「こんなところで何してるの?」
声がおかしい。
まるで女の人の声だ。
でも、顔はクリスさんだ。
「えっと・・・散歩です。クリスさんは?」
本当にクリスさんなのかなという違和感を持ちながら。
私はクリスさんの顔を見る。
「オレは秘密。早く部屋に戻ったほうがいいよ。蘭に何言われるかわかんないよ」
クリスさんの顔は無表情だ。
昨日のことなんか、一切気にしてないんだなと思った。
「ごめんなさい。クリスさん。戻ります」
謝ると。さっさと戻ろうと思った。
屋敷へ戻ろうとするとクリスさんが何かしゃべりだした。
「もしさ」
「はい?」
振り返ると。クリスさんはじっとこっちを見つめる。
風がぴゅうと吹いた。
暗闇に立つクリスさんはやはり昼間とは雰囲気が違う。
「もし、ここから逃げ出そうと思うなら。やめたほうが絶対いいよ」
「え?」
クリスさんは、にっこりと笑った。


