いつもだったら、玄関まで送っていくけど。
渚くんとクリスさんに会うのが怖いので。自分の部屋で「また、明日」と挨拶する。
「カレンさん」
先生が私を見る。
「何か困ったことがあったら、一人で抱え込まないで相談してね」
ポンッと先生が私の肩に手をのせる。
「ありがとうございます。また、明日よろしくおねがいします」
「じゃあ、明日」
先生はそう言って微笑んで出ていく。

先生は優しい。
でも、どこか距離があることは知ってる。
誰かと親しくなったとしても。
一定の距離は取らなきゃいけないんだってこと。
わかってるつもりなんだけどな。
時々、よりかかりたくなる。

先生が普段、どこから来て何をしているのか。
結婚しているのか、家族はいるのか。
私は知らない。
聴くのが怖い。

先生はお金で動いていて。
悪魔でも仕事として勉強を教えてくれているだけだ。
相談なんて、したところでどうなるんだろう。