「気持ち悪いな、お前」
何度、蘭の言葉が頭に繰り返し浮かぶことか。

8歳の誕生日だった。
誕生日の日は特別だった。
年に一度だけ、私はお兄様と一緒に外出することが出来た。
その年の誕生日、私はどこかの屋敷で蘭と出会って。
いきなり「気持ち悪い」と言われ、突き飛ばされたのだ。

皆、笑うと思うけど。
私はそれまで、自分の顔が気持ち悪いだなんて思ったことがなかった。
幼かったから。
世間から隔離されているってことだって知らなかったし。
自分が他の子と比べて異常だってことも気づかなかった。
その頃からフェイスベールはつけてたんだっけ。
でも、暑くて取っちゃったのかな。
素顔の状態で一人、お庭で遊んでいたら。
同い年くらいの男の子が近づいてきて。
私の顔を見てはっきりと「気持ち悪いな、お前」と言った。

あの日から。
私は自分がバケモノだということを自覚した。
せめて。
家族が教えてくれたらよかったのになぁ…って。
全く知らない男の子に言われて気づいて。
その日から今日まで、ずっと傷ついて生きている。

「カレン、夕飯の時間よー」
扉の向こうでサクラが叫ぶ。
「ごめんなさい。食欲がないので・・・」
そっとしておいてほしかった。