ぜんぜん足りない。



とぼけた声。


その口元が小さく笑ってる。


わたしの質問には答えず



「桃音、」


吐息交じりにもう一回名前を呼んで。




「おれの部屋、こっちね」

「え、あっ、?」



掴んだ手を、ぐいっと引っぱられた。



「宿泊代は部屋でもらう」



あくまで面倒くさそうに、こおり君はそう言った。