ぜんぜん足りない。


「何っていうか……一応、それだけ、だよ」

「そう。わかった」


切ない。温度差があまりに激しくて。

膨らんでた気持ちが急にしぼんでいく。

こんなんなら、言わなきゃよかった。

こおり君には関係ない。
間違い……ないね。



チキン南蛮の味もあんまりわからなかった。
大好きなプリンでさえ。


お会計のとき、こおり君がわたしのぶんも払ってくれたのに、お礼を言うにも上手く笑顔がつくれなかった。



ひとりで空気を悪くしちゃだめだ。

そう思っていつも通り振る舞おうとするのに、いつも通りがどうなのかすらわからなくなってくる。



──────再びスマホが鳴ったのは、マンションのエレベーターの中に入ったとき。