ぜんぜん足りない。



律希からだ。

ああ、やだ。考えたくない。
せっかく好きな人とふたりなのに。


わたしがに通話がかかってきたことに目の前にいたこおり君は気づいたはずだけど、特になにも聞いてこなかった。

誰からの電話だろうが、どうでもいいんだよね。

だけど……隠しごとは、なるべくしたくない。



「こおり君、あのね、」

お箸を置いて、形のいい瞳を見つめた。


「実はわたし。お、お兄ちゃんがいるんだよね……」

おにいちゃん、なんて本当は一度も呼んだことないけど。


「へえ」

興味なさげな声。

でも、真剣に話してるのが伝わったのか、こおり君もお箸を置いて、まっすぐこっちを見てくれた。



「で、あの、血が繋がってなくて……」

「………」

「同い年で……男の子、なんだけど」

「………」

「高1の秋ごろまで、……一緒に住んでたんだよ」


最後まで目を合わせていられなかった。

そして言葉を続けられなかった。

何を言っても、どんなふうに伝えても、後ろめたく聞こえる気がして。