ぜんぜん足りない。


決して大きな声じゃないのに、むしろ静かなのに、わたしの頭の中にビリビリ響いた。

脳に到達したら、体が勝手にいうことを聞いてしまうんだ。甘い条件反射。


机に腰掛けたこおり君の目線は、立ってるわたしと同じくらい。



「い、いくね」

「いちいち言わなくていいから」

「うう……」


意地悪いことを言うわりに、その口元は上機嫌に弧を描いていた。



「こおり君、目とじて?」

「いや」

「ええっ」

「見ててやるから、早くして」


見られてたらさすがに無理!

なんて言ったところで、閉じてくれるわけもないので、二度は言わないことにする。


えいっ。


思いきって顔を近づける。


「………」

ちゅ、とか、可愛い音は出なかった。



「……今、した?」

「したよ」

「一瞬すぎ。てか、合わさってなくね」

「ちゃんと触れたよっ」


緊張しすぎて、かすめた程度だけど、ぜったい触れたのに──────。

そんな弁解も、次の瞬間には


「下手くそ」


噛み付く唇の中に、のみ込まれた。