ぜんぜん足りない。



「ちょ、え、待ってよこおり君」


引き止め役は、いつもわたしだね。



「時間差つけて出てきてね。誰が見てるかわかんないし」

「うん、わかった……けど。もうちょっと一緒にいたいよ」


「おまえさっき、学校でヘンなことはしないでって言わなかった?」

「ヘンなことはしないよ! しゃべったりしたいってことだよ。あと、恋人っぽくぎゅってするとか、あとはキスとか……」



つい欲が出たわたしに、呆れたため息がひとつ。



「線引きブレブレ」

「線引き?」

「まあいーや。そんなにしたいなら、どーぞ」


こおり君がどかっと座った。
机を椅子にして。



「ぜんぶ桃音がしてみせて」

「えっ」

「今したいって言ったこと、おれに」

「わ、わたしがこおりくんに?」


変わらず冷静な目がすっと細められる。


「やれよ」