ぜんぜん足りない。



──────3秒間、目が合った。


学校でこんなに接近するの、初めてだなあとぼんやり思う。

わたしにそっけないこおり君はいつも制服を着てるからか、目の前にいるこおり君が、別人に見えた。



「さみしいから、無視しないで」

「うん。できるだけ」

「できるだけ、じゃなくて……」

「なんか、」


食い気味に遮られる。

こおり君の視線がわたしの首元あたりに流れて、長い指が、リボンにかかった。



「お互い制服って、もえる」


浮き沈みのない声。
伏目がちにわたしを見る瞳。

何を考えてるかまるでわからない。
口元だけが、相変わらず薄く笑ってて。



「ほんとに泊まるの、おれの部屋」


同じ調子で聞いてくる。

直後、目の前に影が落ちてきて、唇に柔らかいものが触れた。

……ゼロ距離。


唇を重ねながら、冷静な瞳がじっとこちらを見据える。


「……っ、ん」

甘く噛まれると頭の中がジン…と痺れて、自然とまぶたが落ちていく。



「泊まんなら、ふつうにこーいうこと、するけど」


反対の手がスカートに触れたのがわかった。

控えめにまくりあげて、中の太ももに触れる。

その大きな手がゆっくり動くと、ひゃ、と、うわずった声が漏れてしまった。