ぜんぜん足りない。


だけど、それはなんの偶然か。


ふいに、スマホがブルブルっと振動して、メッセージの通知が画面に表れた。


その名前を見た瞬間、

──────今度こそ、本当に心臓が飛び出るんじゃないかと思った。



“ 矢野 律希 ”

やの、りつき。


ゆっくりと文字をなぞる。

彼からの、2年ぶりの連絡。



【 やっほー。桃音元気してる? 】

【 実は今日こっちに帰ってきたんだよね 】

【 詳しいことはあとで話すから 】

【 とりあえず、今日泊めてくんない? 】



……うそだ。

体温が、一気に低くなったきがした。



「ちょっとごめん、トイレ行ってくるね」



ふたりにそう告げて席を立つ。

幻かと思ったその通知、何度目をこすっても、消えることはない。



無意識にこおり君の姿を探した。

教室にはいない。

友だちと、食べてるのかな。



彼からの──────律希からの通知を無視して、こおり君の連絡先をタップした。

メッセージじゃなくて、通話。


お願い、気づいて……って、祈りながら。