ぜんぜん足りない。



だって、学校でイチャイチャできないことよりも、こおり君と別れることのほうが何倍もイヤだから。



「……うん。実は、遠距離なんだよね。えへへ、思いのほかつらくて、参っちゃう」



作り笑い。ほっぺたがひきつってて、ちょっと痛い。

ミヤちゃんとみっちーが同情するみたいに眉毛をハの字に曲げるから、胸がずきずき痛んだ。



「あのさ、これ聞いていいかわかんないんだけど。桃音ちゃん、一緒に住んでたってことは、さ……」

「ああ、えっとね。兄妹、なの……。血は全く繋がってない、義理のキョーダイ」


これは嘘じゃない。


「えー、すげぇ。ってことは、相手は年上か」

「ううん。誕生日があっちが早いってだけで、同級だよ」

「そっか。その人どこに住んでんの? 近々会える予定とかないわけ?」



うーん、ないかなあ。
曖昧にぼかして答える。

早くこの会話を終わらせたかった。
あんまり思い出したくない……から。