ぜんぜん足りない。


びっくりした。心を読まれたのかと思った。
心臓リアルに飛び出ちゃいそう。



「だよなあ。光里は好きになるだけムダっていうか。彼女いるらしーし?」

「っ。あ……え、そ、そうなの?」


「ん? 桃音ちゃんも昨日の話いっしょに聞いてたじゃん? 光里、彼女が待ってるから〜っつって遊びドタキャンしたって」

「あっ。うん、そうだったね……!」


さっきからテンパりまくりで恥ずかしい。
焦りを誤魔化すように、机にあった下敷きを仰いだ。



「ま、彼女いるってのもホントか怪しいけどなー」

「そうだよね。こおり君って、たしかにそのあたり謎だよねぇ」


冷や汗を垂らしながら話を合わせていたら、お弁当箱をもったミヤちゃんが

「どうしたの? なんの話?」

と興味深々な様子で近寄ってくるから、また頭を抱えるハメになる。



「桃音ちゃんの好きなヤツが誰か聞いてたとこっすわ」

「桃ちんの好きな人〜? なあに、みっちー気になるの?」

「そりゃあ。隣であれだけわかりやすく悩まれたら、気になるよなあ」