ぜんぜん足りない。





──────……


キーンコーン……
まぬけなチャイム音がお昼休みの始まりを告げる。

朝からこおり君に拒絶されて、追いかける気力はもう残ってなかった。



「桃音ちゃん。さっきからため息、何回目?」


みっちーが話しかけてくるから、慌てて笑顔をつくる。



「わたし、そんなにため息ついてた? あはは」

「うん、それはもう。おまけにこの世の終わりみたいな顔してたし、いったいどうしたのかと」

「こ、この世の終わり……」



さすがにそれはやばいね。
楽しいことでも考えて、気分上げなきゃいけないね。


「また、例の好きな人のことで悩んでんの?」

「へっ! ああ、うん……実はそうなんだよね!」

「そっかあ。えー気になるなー。桃音ちゃんの好きなヤツ、誰なのか」



ニコニコ、ニコニコ。八重歯を見せるみっちー。



「やっぱり光里……?」

「っ、!?」

「それはベタすぎるかー」

「っ、そうそう! こおり君はみんなのものだしね!」