ぜんぜん足りない。



小さな音がした直後、胸元がすうっとした。

肌に自分のとは違う温度を感じて、ハッと我に返る。




「桃音って、鎖骨の下にホクロあるんだ」

「ん、ひぁっ⁉」


「せっかく声はかわいーんだから、もっと色気のある出し方しなよ」

「え……ぅ、だって、いきなりなぞられるから」



初めての感覚。

制服の上からこちょこちょされるのと、ぜんぜん違う。



「なんでボタン外すの……っ?」

「アハハ、顔真っ赤」


「笑いごとじゃないよ、ブラ見えちゃう……」

「いーよ。心配しなくても。見てもなんとも思わない」



そう言いながらも、こおり君の指先はもうひとつ下のボタンに掛かろうとしている。


マッハで思考を巡らせる。

この状況。自分に当てはめて考えたことがなかっただけで、……知らない、わけじゃない。


少女漫画とかで、そーいうシーンを見るたびにドキドキして、いつかわたしも好きな人と……なんて、思ったりしてた。


……けど。