ぜんぜん足りない。



「桃音って、キスされたら誰にでもこーいうことしそう」


少し笑った声が落ちてくる。



「しないよ」

「どうかな。いろいろ弱そうだし」


「っ、しないってば。そーいうことするのは、こおり君でしょ」

「そう見える?」


そう見えるっていうか。


「実際、してるんじゃないの……?
……他の子と」


また、細められた目。

返事の代わりにキスが降ってくるのは、どうしてか予想できた。

弱いわたしは、不安を無理やり打ち消して受け入れることしかできない。



「……今日のこおり君、キスばっかり」

「たまにはいいでしょ」


嬉しいけど、たまにはじゃ、ほんとはいやなの。


「学校でも、一緒にいたいよ」


ぽろっと本音がこぼれる。

何回もだめって言われてるのに、ぜんぜん懲りないわたし。


「ぜったいバレないようにするから。学校でも、ときどき喋りたい」


こおり君の目は、見れなかった。