ぜんぜん足りない。




目の前がまた暗くなる。


「約束する」


優しく塞いで、甘噛み。



こおり君に甘噛みされるのが好きだった。

軽く歯を立てて、痛くない痛みを与えられるのが好き……。



「こおり君は、すぐ知らん顔してどっか行きそうだよ」

「……」


「どこか行きそうになったら、噛む、からね」

「噛むの?」


「うん」

「桃音が?」


「わがまま聞いてくれなくなったら……噛む。好きな人と一緒にいるときに、我慢したくないもん」

「……わかった」