ぜんぜん足りない。


ゆっくりと意味を読み込んだ。

何回も再生して、たしかめる。


どう頑張っても、わたしのことを好きって言ってるようにしか聞こえなくて、こんどは幻聴かと思った。


こんな夢みたいな展開、信じると思う?


心臓がバクハツするんじゃないかってくらい、耳元でドンドコいってるの、信じられる?



1分以上経って、ようやく口を開いた。




「信じないよ……」



わずかに揺れた瞳。

その表情をぜんぶ見逃したくなくて、顔を近づけた。




「今、キスしてくれないと信じない……」



震える唇から、なんとか言葉をつむいだ。



「こおり君、……っ、ん」



たしかに触れた。

体温が伝わって、少し余裕のない吐息が、こぼれて。



でも、そんなのじゃ足りないの。