ぜんぜん足りない。



幸い車通りは少なくて、桃音は無事に猫を道路の隅まで移動させられたわけだけど。


この子、ほっといたら色々と怖そうだな。



『あーあ。派手にやってんね』



話しかけるつもりはなかったのに、口が勝手に動いてた。

そして、足も、手も。


紙袋から飛び出た大量のプリンを拾ってやりながら、なんとなく相手の目を見た。



『好きなの? プリン』

『う……うん、大好き。あ、あのね、近所の洋菓子屋さんで、消費期限が今日までのが半額になっててね。 それ、ぜんぶ買って来ちゃった』



へらっと笑うその子を見て、今日までのやつをぜんぶ、ひとりで食うとかバカなんじゃないのって思ったのが半分。

笑った顔、かわいーなって思ったのが半分。



『へー。たくさん食うんだね』