ぜんぜん足りない。




『あっ、にゃんこが道路渡ってる……あああ、寝そべった! どうしよう、轢かれちゃうかも』



ある日、コンビニに寄って帰ってたとき、マンションの前でひとりであたふたしてる女がいると思ったら、桃音だった。


両腕にデカい紙袋を抱えているのに、道路の真ん中にいる猫に視線が釘づけで、手元の注意がおろそかになっていたらしい。


紙袋がぐらり、と傾いたのが見えて

思わず「あ…」と声がでた。


ドサ…と落っこちて、中に入ってたものが散らばる。


あー、可哀想。


なんとなく遠目から見ていたら、桃音は焦ったようにキョロキョロしたあと、驚くことに、袋はそっちのけで道路の真ん中に飛び出した。


ぎょっとして、思わず近づいた。