ぜんぜん足りない。



『ちょうど、うちの娘のとなりの部屋が空いてたんだよね〜。お父様に見つかるまでそこに隠れてなよ!』



……そんな、軽い一言が始まりだった。

冗談かと思ったら、まさかの本気。


世の中案外、どうにかなるんだってことを学んだ。



桃音の母親には本当に感謝していた。

だけど、隣に住んでいるらしい娘には、まったく持って興味がなかった。


とりあえず自分が周りに縛られていないことが大事で、周りの人間のことなんか心底どうでもよかったから。



まったく知らないふりをして引っ越しのあいさつに行ったときの桃音の驚いた顔はそこそこおもしろかったけど、それだけ。


あとは、アホそうとか。なんも考えてなさそうとか。

本当にあの人の娘なのか?っていう疑問すら抱いたけど、数分後にはそんな事実もどうでもよくなっていた。