ぜんぜん足りない。



……でも、それがたまたま桃音の母親だったってだけで、おれと桃音の事情に、この人はなんの関係もない。



「光里くんの苗字は、もうすぐ三島になるんだっけ?」

「その予定です」

「三島光里? なんか似合わないね」



そんな言葉に、苦笑いを返した。




大手芸能事務所──────三島プロダクション。


おれは、社長の三島潤一郎と……その不倫相手との間にできた子供。


こーいうのは、わりとよくある話だって、この周辺の世界で生きてきてわかった。



不倫で生まれた子供に、当然人権なんかあるわけもなく。

三島社長との子供だと本人に認めてもらえなかった母親は、逆恨みをぜんぶおれに押し付けた。



幼少期の残ってる記憶のほとんどは、母親からの暴言と暴力。

痛いと拒否すれば怒られて、諦めて無抵抗になっても怒られる、理不尽な世界。