ぜんぜん足りない。



食べる、食べれないの問題じゃないよ。



こおり君、プリンはわたしの好きな食べ物だよ。

こおり君はそこまで好きじゃない甘々なスイーツだよ。


どうして、こおり君の家にあるの?


「う……」

「う?」



目頭がじわっと熱くなる。

直後、ぽろっと涙が出てきて。


「うう〜っ……」

って、どうしてかバカみたいに情けない泣き声が出た。


こおり君の動きが止まる。

顔をのぞき込んできて「どうした?」って聞いてくるし、その声があったかくてさらに泣けてくる。



「どっか痛い?」

「……ちが……」

「じゃあなに」

「こおり君が……優しい……」

「……」


いいから早く食べな。

小さい声が言う。



わたしから目を逸らして窓のほうに向ける。


夕日に染まる横顔は

どこか寂しそうに見えた。