ぜんぜん足りない。


“え?” が2つ出たのは、驚いたことが2つあったから。


1つは、こおり君があした、那月ちゃんを交えたメンバーで遊ぶこと。

もう1つは、こおり君が──



「今、那月ちゃんのこと下の名前で呼んだ……」


今の状態をひとことで表すなら『絶望』。


ちっとも大げさなんかじゃない。体の全器官の全機能が停止してしまいそうなくらいショックだった。


血の気が引くって言葉をよく聞くけど、ほんとに、血液が急に冷たくなってサアーッと下のほうに流れていく感じ。



「こおり君、な、那月ちゃんのこと、ずっと苗字で呼んでたよね……?」


こおり君と那月ちゃんが話してるとき、いつも聞き耳を立ててたから知ってる。


那月ちゃんがどんなにこおり君のことを『ヒカリ』って呼んだって、こおり君は那月ちゃんのことを『斉藤』って呼んでた。


そこからわずかな安心感を得てたのに……。