ぜんぜん足りない。



だって、マンション内で遭遇しても、にこりともせずに『どーも』だよ。

そして決まって、目が死んでる。


黙って目の前に立たれると、なにか冷たいものに気圧される感覚になるんだ。


ぜったい、体の芯から冷たい人間だって思ったの。



そんな、マイナスのイメージばかりを積み重ねていたから

──────あの日、恋心メーターの調子が狂っちゃったんだ。




『あーあ。派手にやってんね』



マンションの前の道路脇で、大量のプリンが入った紙袋を、偶然通りかかったこおり君の前でぶちまけた。


まず、それを拾ってくれた時点で1つのびっくりができあがる。


そして


『好きなの? プリン』


まっすぐにわたしの目を見て、話しかけてくれたことで、2つめのびっくり。



最後に、切れ長の綺麗な瞳を、すうっと細めて。



『たくさん食うんだね』


……って、あまりにも優しく笑われたことで、3つめのびっくり。



わたしの人生二度目の恋は

たった……その3ステップで

花開いてしまったんだ。