ぜんぜん足りない。



「……ん? あーごめん。回覧板まわってきただけ」



回覧板って……なんでヘンな嘘つくの。

不信感がもわっと湧き上がってきた、その数秒後。



『へー。 ヒカリの家には女の子が回覧板届けにくるんだあ』



ドクドクっと、心臓がいやな音を立てた。

この声って……。



「あー……、うん。隣に住んでる小学生の子」

『そうなんだ。小学生か~可愛いね』

「うん、可愛いよ。じゃーまた」



通話が切れると同時に、こおり君の服をぎゅっと引っぱった。


「こおり君、今のって……っ」

「離して。服伸びる」



鬱陶しそうに振り払うと、こおり君は背を向けて、スタスタ自分の部屋へ歩いていく。


……え?
なに、それ。意味わかんない。


だって、今の通話相手
……那月ちゃんだよね?