ぜんぜん足りない。


体が床にぶち当たって痛いことになると思ったのに、そんな衝撃はいつまで経っても襲ってこなかった。


うっすら目を開けると、みっちーの焦った顔のどアップがあった。



「桃音ちゃん、大丈夫っ⁉ とりあえず、家の人とかに電話して──────」



みっちーが言葉を切る。


それと同時に、反対方向から強い力が加わって……

わたしはたぶん、誰かに肩を抱かれた。




「……桃音っ、」



大好きな声が聴こえたから、いよいよ頭までおかしくなったんだと思う。


やさしい熱が体を包み込んで、なぜかすごく安心した。


こんなに都合のいいこと、ありえない。



わたしはたぶん夢を見てるんだ


じゃなきゃおかしい。


こおり君が、こんなに大事そうにわたしを抱き締めるなんてこと

あるわけないんだから……。