ぜんぜん足りない。



確かに、目が合ったんだ。


だけど相手は、なんでもないように目を逸らす。


生物室の中には入れなかった。



だって、こおり君の前にもうひとり立ってるから。
わたしには背中を向けてるけど、立ち姿でわかる。


こおり君と、那月ちゃん。



──────わたしと目が、合ったのに。


こおり君は、そのまま少し屈んだ姿勢になって。

那月ちゃんの髪に触れて、確かめるようにほっぺたに触れて、


触れて……それから


それから、


唇を、重ねて──────



「……っ、」


涙が溢れるには、十分すぎる光景。


数学で言えば、なんだろう、必要十分条件みたいな。よくわかってないし、たぶん違うけど。


なあんて、妙に冷静な頭でそんなことを考えてたら、また目眩がした。