ぜんぜん足りない。

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夜の7時35分。

前髪を15分かけてセットし直してたら、ちょっと遅くなってしまった。


駆け足で自分の部屋を出て、隣の部屋のインターホンを連打する。


「こおり君、こんばんは!」


インターホンに向かって話しかけると、少し経ってから足音が聞こえてきた。


それだけでそわそわしてくる。


扉が開くまで、あと、3秒、2秒、1秒──。

間もなくして扉が開いた。



「あ、こおりく──んぐっ」



大好きな人の名前は、突然伸びてきた手のひらによって遮られた。

見上げるとそこには、スマホを耳に当ててるこおり君。


反対の人さし指を立てて、静かにしろと命令を送ってくる。

どうやら通話中、みたい。