ぜんぜん足りない。


「オレわかるんだよね〜女の子が悲しんでるときって。ずばり、恋の悩みでしょ! どっかの男に片想いでもしてんじゃないの、国立サン 」


首を傾げて、にこっと笑う中村くん。

さっそく可愛い八重歯が見えた。


ニャンコみたいだなあ、と頭の半分で思いながら、もう半分で、「なんでわかったの?」と心底驚く。


片想いではない(と思いたい)けど、実質片想いみたいなもの。

こおり君がわたしのことを好きだって確証が、どこにもないんだから。



「う……え、中村くんてエスパーなの?」

「おっ。当たってた?」


「っ、好きな人は、いるけど」

「んー、そっかあ。そうかなあとは思ってたけどね。……辛いこととか、悩みとかあるなら、オレ聞きますよお」



スッ、と机の上に中村くんのスマホがスライドしてきた。



「国立、オレのQRコード読み取って」

「え、」

「連絡先交換しよ。クラスのグループからでもいいけど、探すの面倒いでしょ」

「あ……え、うん」