ぜんぜん足りない。


だけど、これも家に帰るまでの辛抱。

こおり君の部屋に行きさえすれば治るもん。


ふたりきりになれば下の名前で読んでくれるし、抱きつかせてくれるし、

キスしたいって言ったらさせてくれるし……。



だから今日も大丈夫

──な、はずだったけど。



「国立ってさ、さいきんいつも体調悪そうにしてない? へーき?」


軽い口調で話しかけてきたのは、1週間前の席替えで隣になった中村未知夜(なかむらみちや)くん。

みんなから『みっちー』の愛称で親しまれてるクラスのムードメーカー。


遊び人だから最初は苦手意識画あったけど、話してみると意外と気配り上手な部分も見えてきて、

さいきんはいい人なのかもって思い始めた。



「あはは、寝不足だからかな〜。ありがとう中村くん」


まさか、こおり君と付き合ってますとは言えないし。

詮索されないように笑って誤魔化した……のだけど。