ぜんぜん足りない。



思い出を振り返っても


こおり君が、

こおり君のことがすきだった……。


それしかでてこないの、おかしいかな。




「最後に、いっこだけ聞いてもいい?」


「うん」


「こおり君は、わたしのこと……ほんの少しだけでも、一瞬だけでも、好きって思ったこと、なかったの……?」



こぼれたセリフに

ああ、未練がましいなって自分でも呆れてしまう。



「……なかった」


こおり君の指先が涙を拭う。

その手つきすら優しいから、気がおかしくなりそうだった。



「ひどい男だって怒ればいーのに」



ばかじゃないの、


そんな声が

耳元で低く響いて。


次に見たのは暗闇。




──────最後のキスは


血の味がした。