ぜんぜん足りない。



上げて上げて、落とされる。

結局いつも本心はわからずじまい。


いつかわたしのこと、ちょっとでも本気で好きになってくれたらいいなって。

それだけで頑張れてたはずなのに……。


期待したって、そのあとに必ず裏切られる。

そのことが頭に染み付いて。──もう、疲れた。



「……律希がいい」

「えっ?」


だって、律希だったら、ちゃんと好きって言ってくれて、毎日不安にならずに済んで、慣れた距離感で楽しく会話できて……。


わかってる。

逃げてるんだ。

こおり君が好きすぎて……逃げてる。

わかってても止められない。


本心じゃないのに……。



「こんなことなら、律希と付き合えばよかった……っ」


そう溢してしまった。

直後、後ろに人の立つ気配がしてハッとする。


振り向いた先で

……そこに立っていたこおり君と

視線がぶつかった。