「いくら桃音ちゃんがヒカリに気があるからって、賭け事なんかに利用して……どう責任とるつもり?」


気づけば教室はシンと静まり返っていた。
中にいる全員の視線がこちらに集中している。

そんな中


「責任取るつもりでわざとやった」


こおり君の声が……静かに響いて。


「ていうか、憶測だけで話進めないでくれる」


こおり君が那月ちゃんをじっと見つめる。



「それにおれは桃音のことを鬱陶しいとか嫌いだとか、一度も言った覚えないんだけど」

「……、え」

「今日の賭け、本当は女子なら誰でもいいって決まりだった。でもおれだって好きでもない相手とキスなんかしたくない。……この意味わかる?」


次の瞬間には、その目はもう那月ちゃんを見ていなかった。

黒い瞳の中、映っているのは───。