ぜんぜん足りない。



時間差でこおり君の質問を理解した頭。


「あ……、昨日は、律希が……」


うっかり口を滑らせそうになる。



「リツキくん?」

「あう……なんでも、ない」

「なんか顔赤いけどへーき?」


顔が赤いのは、こおり君に触れられてるからだよ。そして念願のエレベーターキス、寸前のシチュエーションだからだよ。



「なんでもないから……早く、」

「………」

「しよ? こおり君、キス……」


目の前が暗くなる。
その直前、こおり君の表情が歪んだのは、たぶん気のせい。


「っ、ん……」


柔らかい唇、甘い感触。

もっと感じたくてこおり君のシャツをぎゅうっと掴んで引き寄せた。

そしたら、それに応えるみたいにしてキスが深くなる。



「こおりく……、っう、…」

熱が回ってくらくらする。


だけど……おかしいかな。こおり君とキスしてるのに、不安になるって。

こおり君がこんなに甘いのは、おかしいって思っちゃうの。


普段は冷たくて、ときどき甘い。
でも、甘過ぎないのがこおり君、だから……。