ぜんぜん足りない。


一瞬、こおり君がなにを言いたいのかわからなかった。


でもすぐに理解する。

相手はこおり君だから。わたしのことを、特に好きでもなんでもない、こおり君だから……。


おれに関係ないって、そう言ってる。


やっぱり傷つけられた。
今日はどこで過ごしても何をしてもだめな日だ。



「やっぱり……そうだよね、わかってるけど」

「……は、なにが」

「わたしが誰とキスしても…こおり君には関係なくて、どうでもよくて……」

「どうでもいいわけじゃ、」


遮る声を遮った。


「それでも……っ、わたしは……こおりくんの、だから……」


こおり君は “わたしの” じゃなくても



「キスするのは、こおり君とじゃなきゃイヤだった、の……」


消え入りそうなこの声が自分のだなんて、可哀想すぎる。


どこまで面倒くさい彼女になり下がったら気が済むんだろう。

やっぱり、ぜったい別れたほうがいいのに。

なんで好きって気持ちは、簡単に失くならないんだろう。



「じゃあ、」


こおり君の指先が伸びてきてびくりとする。

わたしの横髪をそっと解いて、すくいあげて、耳にかけた。



「おれがキスしたら、さっきのは忘れる?」

「……、へ……?」

「ちゃんと忘れろよ」


ふと目の前が暗くなる。



「……っ、ん」


───お風呂あがりのせい、かも。


重なったこおり君の唇は、いつもよりやさしい気がした。