ぜんぜん足りない。



リビングにこおり君はいなかった。

まだお風呂、あがってないのかな。
……よかった。


ソファの上で膝を抱えて丸くなる。
涙がぽろぽろ溢れて止まってくれない。

気づけばリビングの台の上にたたんであったこおり君の服を、無意識に掴んでいた。


本人の代わり。
……とか言ったら、また気持ち悪がられるんだろうな。

「うぅ……っ」と情けない声が漏れる。

その声が情けなさすぎてさらに悲しくなった。



わたし今、やばいことしてる。

泣きながらこおり君の服を抱きしめてる。

誰がどう見てもヘンタイだ。わかってるけど、今はそんなのどうでもいい。


なんで、キスしたの……律希。

頭の中そればっかり。



──たぶん、泣き疲れたんだと思う。

こおり君の服を抱きしめたまま、ソファで眠ってしまってた……らしい。



「桃音。……それおれの、」


静かな声がわたしを現実に引き戻した。