ぜんぜん足りない。


悲しそうな、顔……。

ううん、そんなはずない。見間違いだ。見間違いじゃないなら、律希の演技だ。


「……いつまでもからかわないで」

「からかってねえよ」

「べつに、わたしが誰好きでもいいじゃんっ」

「いいわけねえだろ」

「なんで? 」

「寂しいって泣きついてきたのは、お前のくせに……」

「っ、……」


ぐらんと、一瞬、景色が歪んで見えた。

記憶がフラッシュバックする。

泣きついてた。たしかにそう。
でも……


「律希のこと、もう好きじゃないよ」


自分でも驚くくらいハッキリとした声が出た。

すると、律希の指先が、わたしの頬に触れて。


どう考えても“そういう雰囲気”じゃなかった。
のに、どうして。


わたしの視界が遮断されると、


それを合図にするみたいに

──────唇が塞がれた。