ぜんぜん足りない。



リモコンはソファのクッションに挟まっていた。

なんでそんなことろに……と思いながらも犯人は自分しかいないから何も言えない。



「どんなズボラな性格してたら、こんなとこにリモコン挟まんだよ」


久しぶりに顔を合わせた律希はやっぱり口が悪かった。語尾がトゲトゲしてる。なにかに苛ついてるみたいに。


「なんか機嫌わるいね、律希」

一緒に住んでるときも、だいたいこんな感じではあったけど。


「べつに普通だろ」

「その言い方が悪く聞こえる」

「………」

「じゃあ、わたしもう行くから……」


背を向けた。
早くこおり君のとこに戻らなきゃって気持ちが急かすから。

でもその矢先、

「待て」

律希に引き止められて。



「お前の好きなヤツって誰」
「っ、え」


どこか余裕のない目がわたしを捉える。



「俺じゃねーの? ……もう、ほんとに」


──すぐに答えられなかったのは、律希の瞳にふと影が落ちたようた見えたから。