───────あれから十年の月日が経った。





十年、変わったことは山ほどある。

まず、凛也さんは約束通り社長になり、一之瀬と華山の関係を揺るぎないものとした。

期待された跡継ぎは見事にその仕事をやって見せ、期待以上の成果を出したのだ。


一之瀬と華山の間には信頼関係と莫大な利益が生み出され、そこには両家の婚姻関係などあまり必要とされないほどの実績を凛也さんは叩き出した。

新しく社長となった彼は約束通り結婚の話を白紙に戻してくれた。

「こんな下らなく古い考えに振り回されるのは御免だ」と言っていた彼は今も一之瀬を引っ張っている。




お父さんは最初結婚の白紙化を凛也さんから聞いた時酷く困惑していたけれど、一之瀬と華山の事業が大成功した事から渋々納得してくれた。


そしてわたしにミナトとの事を謝った。

正直今更謝られたところで⋯という気持ちがないわけではないけれど、わたしも今年で二十八歳になり、お父さんの親心があの頃より理解出来る気もする。


お父さんにはお父さんなりの考えがあって、会社への責任もあって、だけどちゃんとわたしへの愛情もあった事を、やっとわかった気がするよ。