夏休みが終わり、季節は秋へと映っていく。
緑色だった葉が次々に色付いていくのを見る度、どうしようもない焦燥感に襲われる。
あれから、わたし達の問題は何も解決していない。
解決どころか進展さえしていない。
お父さんはわたしの話に聞く耳を持ってくれない。夜遅くまで起きてお父さんの帰りを待っていても「話すことはない」の一点張りでもはやどちらが先に折れるかの粘り合いに発展しかけている。
お父さんが話を聞いてくれなきゃ、お父さんが味方になってくれなきゃ何も進まないのに。
お母さんはお母さんで相も変わらずお父さんの味方だし。
ミナトと一緒に過ごせば過ごす程、この時間はあとどれくらい続くのだろうって。
本当にミナトと過ごせる未来はあるのかなって、不安になる。
もう半年後に迫ったわたしと凛也さんの結婚は、着々と現実味を帯びてきていた。
「もしもし⋯」
『君から電話してくるなんて珍しいな』
「もしお時間があれば明日少し会えませんか?」
夜、どうにかしなくてはと焦りながら電話を掛けた先は凛也さん。
ミナトとは違うその声はやはりわたしの胸を熱くはさせてくれなかった。
『明日?なら19時に○○にあるレストランでどうだ?』
「⋯わかりました。では、明日19時に」
すんなりとわたしの申し出を了承してくれた凛也さんは、わたしの言葉を聞くと早々に通話を終了させる。
ツー、ツー、という冷たい機械音はどこか彼自身を思わせた。