「わたしだって、家が⋯会社がどうなってもいいわけじゃないよ」
「⋯」
「だけど⋯好きなんだもん⋯初めて人を好きになったんだよっ」
「さくら⋯」
「ミナトだけは手放せない」
「⋯」
「お父さんが会社を守る様にわたしだってこの恋を守る」
「⋯っ」
「絶対に諦めないから」
涙を拭ってお父さんと視線を合わせる。
これは、一世一代の反抗期。
生まれた家なんて関係ない。
一人の女として幸せになりたいの。
ミナトと二人で笑いあっていたいの。
「わたしもごめんね、お父さん」
そう呟いて、ハンカチを握りしめる。
「これは洗濯室に持っていくから。⋯おやすみなさい」
また、風が吹く。
お互い譲れない思いをぶつけ合った、七月の夜。