全てを捨てる⋯。


それはお父さんもお母さんも、家で働く皆の事も見捨てるという事だ。

ミナト以外どうでもいいと、突き放す事だ。




「っ」

「出来ないだろう?なら大人しく従うしかないんだよ」




ミナトの事は大切だ。

大好きだよ。

だけど、だからって他の人皆を切り捨てる事は⋯⋯出来ない。

ミナトが一番大切だと思う気持ちにだって嘘はない。

ないけど、他の人がどうでもいいってわけでもない。




「少女には酷な話だろうが、それが現実だ」



わたしより4つ年上の凛也さんは来春大学を卒業する。

そして自身の家が経営する会社に入社して、次期社長として働く。

会社の為に結婚して、親の敷いたレールを踏み外さずに会社の為に働く。


それを受け入れている彼は、どこまでも大人に見えた。

4つしか変わらないのに、悲しくなる程大人に思えた。



同情してしまう程に。